採用競合の求人を比較する方法|給与の内訳・仕事内容・不明点をそろえる
アイキャッチ画像は求人情報を照合する机を表現した架空のイメージです。実在の職場や採用支援の実績を示すものではありません。
近隣の会社より月給を低く見せていないか。同じ職種の求人と比べて、何の説明が足りないのか。採用競合の分析で求人を集めても、見出しの金額と職種名を並べるだけでは、次に直す場所を判断できません。
まず「今回の比較対象に含める求人」を決め、その後で「項目ごとに比べられる範囲」を分けましょう。本記事では、運送・建設企業の採用担当者に向けて、公開求人を読み、掲載上の差と不明点を社内へ渡す方法を紹介します。実際の併願先、支給実績、採用成果を公開求人だけで確定する方法ではありません。
採用競合の候補を探すことと、併願競合を確定することは別
同じ人が応募先として検討し得る求人は、事業上のライバル企業に限りません。一方、同じ地域・職種で募集しているからといって、自社の応募者が実際に併願しているとは分かりません。ここで作るのは、あくまで公開条件を比較するための候補一覧です。
対象を絞る目的も、「競合企業の全体像を確定する」ことではなく、自社の一つの募集と条件をそろえて読むことにあります。今回の比較から外した求人でも、ある求職者には選択肢になる可能性があります。
採用施策全体の整理は採用マーケティングの解説に譲り、ここでは公開情報から判断できる範囲に絞ります。候補者へ併願先を聞いたり、他社へ応募して調べたりしなくても、この記載比較は進められます。
比較前に、自社の募集と求人の記録単位をそろえる
職種名より、仕事・勤務地・必須条件を見る
最初に自社の対象業務、実際の就業場所、雇用形態、必須の資格・経験、勤務時間帯を書きます。運送なら地場配送か泊まり運行か、扱う車両・荷物・荷扱いは何か。建設なら補助業務か、工程調整などを自ら担う仕事かまで区別します。
ハローワークの求人記入案内でも、なじみのある職種名だけでは仕事内容が分からないこと、業務や必要な資格・経験を具体的に示すことが説明されています。この考え方を、他社求人を読む際にも使います。ただし、以下の比較手順は本記事の実務提案であり、行政が定めた競合分析の方式ではありません。
勤務地は本社住所ではなく、出勤する営業所や現場を確認します。近い住所でも、始業時刻に使える交通機関や車通勤の条件が異なることがあります。建設では集合場所と直行直帰の扱いも分けます。一律の半径で同じ通勤圏と決めず、勤務帯や集合場所が不明なら、その点の判断を保留します。
一つの募集に、出典と日付を付ける
表計算ファイルなどに、一募集につき一行を作ります。最低限、次を残してください。
- 雇用主、職種、拠点、雇用形態と、対象業務・必須条件・勤務帯。
- 求人URL、閲覧日、掲載側が示す更新日。更新日がなければ「不明」。
- 比較した記載内容と、未記載・説明が食い違う箇所。
同じ雇用主・拠点・業務の募集が複数媒体に出ている場合は、同じ募集と確認できる範囲で資料をまとめます。別募集か判断できなければ、推測で統合しません。掲載本数をそのまま企業数や募集人数として数えないようにします。
また、閲覧日は「自分が見た日」であって、条件が適用された日ではありません。募集終了が確認できた求人は現在の主な比較対象から外し、必要なら履歴として残します。複数媒体で条件が違うときも、都合のよい方だけを採用せず、相違ありと記録します。
求人全体と項目別の、二段階で判断する
第1段階:その求人を、今回どこに置くか
- 主比較に含める
- 対象業務・勤務帯・応募要件などが、今回の自社募集と近く、比較の前提を確認できる求人。
- 別のグループに分ける
- 職種名は近くても、担当する仕事や勤務条件などが異なる求人。違いを記録し、同条件の比較には混ぜない。
- 保留する
- 対象業務や就業場所などが不足し、どちらに置くか決められない求人。不明点を明記して残す。
第2段階:その項目で、何を言えるか
主比較に入れた求人でも、すべての条件を順位付けできるわけではありません。項目ごとに「記載範囲で比較できる」「前提が異なるので並べて示すだけ」「情報不足で結論を保留する」の三つを付けます。
たとえば、仕事内容と勤務地が同じ程度まで書かれていれば、その二項目は比較できます。給与内訳が不明なら、給与だけを保留します。一つの空欄を理由に求人全体を捨てず、反対に、主比較に入れたことを理由に不明な給与まで比べないのがポイントです。
休日も「年間休日」と「有給休暇の取得日数」は別の情報です。教育制度も、名称があることと、担当者・期間・実施内容が分かることは別です。表の欄を埋めるために意味の違う記載を同じ項目へ押し込まず、原文の区別を残しましょう。
給与は、見出しの月給を内訳と適用条件に分ける
ハローワークの案内では、賃金欄を基本給、定額的に支払われる手当、固定残業代、その他の手当等に分けています。また、総支給例とその前提、実績に基づく昇給・賞与、試用期間中の待遇も確認する内容です。比較メモでは、次の順番で抜き出します。
- 基本給と定額手当:明示された額を分け、手当の支給対象・条件を残す。
- 固定残業代:金額、対応する時間数、超過分の扱いを確認する。
- 変動・条件付きの支給分:資格手当、歩合など、誰にどの条件で付く額かを分ける。
- モデル額と期間:「月収例」「月給○万円可」の対象者・残業等の前提と、試用期間中の条件を確認する。
厚生労働省の募集時の労働条件明示に関する資料では、固定残業代を採用する場合、固定残業代を除く基本給、対応する時間数と金額、超過分の割増賃金を追加支給する旨の記載が必要とされています。これは募集時の記載ルールであり、他社との給与順位を決める基準ではありません。
未記載は「0円」や「制度なし」とは違います。月給から固定残業代だけを引いた残りにも手当が含まれる可能性があるため、残額を自動的に基本給と呼ばないでください。固定残業の時間数も、実際の残業時間を示す数字とは限りません。
賞与の過去実績を全員の保証年収へ加えたり、対象期間・勤務時間・内訳が不足する額を時給に換算したりするのも避けます。金額の大小より、何を含む額なのかを先にそろえましょう。
架空A〜Dで見る、比較を続ける場面・分ける場面
以下は判断方法を示す架空例です。実在求人、業界の給与相場、JobProの支援事例ではありません。
A:見出しは他社が高いが、基本給では差が逆になる
地場配送で、勤務帯・応募要件が近い二つの求人を想定します。他社Aは「月給27万円」で、基本給22万円と固定残業代30時間分5万円、超過分は別途支給。自社は「月給26万円」で基本給26万円、時間外の割増賃金は別途支給という設定です。
- 見出し額の差:他社Aが自社より1万円高い。
- 明示された基本給の差:自社が他社Aより4万円高い。
- 結論:給与の構成が異なる。実際の総受取額や待遇の優劣は、この数字だけでは決められない。
Aは主比較に含め、基本給の記載差は比較可能とします。一方、見出し額は含まれるものが違うので並記にとどめ、実残業や条件付き手当を含む総額比較は保留します。この架空の金額だけで、固定残業代の法的適否を判断するものでもありません。
B:同じ「配送」でも、日帰りと泊まり運行は別にする
自社は日帰りの地場配送、他社Bは泊まり運行で、必要免許も異なる設定です。今回は日帰り求人の比較なので、Bは別グループへ移し、運行形態と免許要件の違いを残します。「実際の採用競合ではない」と断定するのではなく、今回の比較条件と異なる、という判断です。
C:「月給30万円可」でも、給与以外は比較できる
他社Cは対象業務・勤務地・勤務帯が自社と近く、主比較に含められるものの、「月給30万円可」の内訳と適用条件は書かれていない設定です。給与は結論保留とし、記載のある仕事内容や勤務地は別に比較します。金額を基本給扱いしたり、記載不足から低賃金・違法と決めたりはしません。
D:建設の同じ職種名でも、補助と単独の調整業務は分ける
自社は写真整理・書類入力などの補助、他社Dは工程調整を単独で担う経験者向けの求人という設定です。同じ施工管理関連の職種名でも、最初に任せる業務が違うため別グループにします。給与だけを取り出して「同じ仕事なのに差がある」とは書きません。
自社の業務・経験・資格要件が曖昧な場合は、施工管理の採用要件の整理へ戻りましょう。法定の配置要件を、求人比較の職種名だけで判断しないことも大切です。
自社の空欄と、他社の空欄では次の行動が違う
自社の公開求人に試用期間中の条件が書かれていない一方、社内の最新の募集条件資料には確定内容がある場合、まず資料と対象求人の一致を担当者へ確認します。一致が確認できれば、待遇の変更ではなく、必要な説明を補う修正候補にできます。
社内資料も未確定なら、人事・労務や現場責任者など、条件を決める担当へ確認します。他社の記載を参考にして自社にも同じ制度があることにしてはいけません。聞き取りと原稿化は求人原稿のヒアリング項目と整理手順を使って進められます。
他社側の空欄は、自社内の照会では解決しません。確認した公開情報に根拠がなければ「他社は未記載・未確認」のまま残します。「他社は説明がないから自社が有利」という結論にもせず、自社が正確に説明できる部分を整えます。
厚生労働省の資料では、募集情報を正確かつ最新の内容に保つ義務も示されています。比較結果から修正するときは、自社の根拠資料・確認者・変更箇所を残し、対象の求人媒体や採用ページへ反映します。給与差だけで応募不足の原因を決めたり、比較表をそのまま賃上げの承認に使ったりせず、条件改定の要否は社内の担当者が判断します。
比較した結果を社内へ渡す短い記入例
最後は、ランキングではなく「掲載上の差」「比較できない点」「自社で確認する点」にまとめます。次はAとCを使った架空の引継ぎ例です。実務では求人URL、閲覧日、掲載側の更新日を添えてください。
- 対象と求人の扱い
- 正社員の地場配送。同程度の業務・勤務帯・応募要件を比較。A・Cは主比較、泊まり運行のBは別グループ。実際の併願関係は未確認。
- 掲載上の差
- Aの見出し額は自社より1万円高いが、明示された基本給は自社が4万円高い。給与構成が違うため、総額の優劣には置き換えない。
- 比較できない点
- Cの「月給30万円可」は内訳・適用条件が不明。給与は保留。A・Cとも実際の支給額を確認したわけではない。
- 自社で確認する点と次の作業
- 採用担当が次回の原稿確認までに、試用期間中の条件を人事・労務へ照会。対象募集の確定資料と一致すれば、公開求人へ説明を補う。他社の空欄は未確認のまま維持。条件改定の判断は別途、責任者へ渡す。
ここまで整理できれば、比較表を埋め続けるのではなく、自社の確認と原稿修正へ進めます。確定した情報を採用ページへ配置する段階では、採用LPの構成・制作手順を参考にしてください。
自社の仕事内容・募集条件を求人原稿や採用情報へどう整理するか相談したい企業の方は、JobProの運送業向け採用支援相談・建設業向け採用支援相談をご利用ください。対象職種、自社の求人URL、確認済みの条件と不明点を整理しておくと、相談する内容が明確になります。これらは企業向けの相談窓口であり、求職者の求人応募窓口ではありません。
出典・参照資料
- ハローワークインターネットサービス「応募したくなる求人へ!」:仕事内容、賃金内訳・支給例、試用期間の記載に関するPOINT2〜4。
- 厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」(PDF):固定残業代を採用する場合の記載と、募集情報を正確・最新に保つ義務。
出典確認日:2026年9月18日。二段階の比較手順、A〜Dの架空例、社内への記入例は、本記事の実務提案です。